島までは遠い

佐藤正志@サークルアラウンドのことが少しわかる場所。プログラマーを育てるトレーナーとして、現役のソフトウェア技術者として、経営者の端くれとして、想うことをつづる予定。しばらくは工事中。

「ITエンジニアは人手不足だから、スキルが無くても問題ない」の嘘

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はじめに

これと、前に私の書いたエントリについてたブコメのこれ

「未経験から技術を学んで就職するには」で一つのアプローチを整理してみました - 島までは遠い

まず、みずほに潜り込みます / そもそも業界内で人がどの位不足してるかを調べて欲しいが、結構難しいんだよね。不足してるなら何とかなるし、余ってたら無理だし。

2018/08/08 13:55
b.hatena.ne.jp

拝見してたらなんとなく出力したくなったので書きます。先のツイートにRTされている内容も様々な意見があって興味深いです。

プログラマーの仕事、そんなに簡単に見えますか?

エンジニアやプログラマーは人手不足!スキルなくても全然大丈夫

これは、ありえませんから。補足します。

エンジニアやプログラマーは人手不足!(もしも、あなたが仕事の質や直近の成長を捨てる覚悟があるのなら)スキルなくても全然大丈夫

じゃないでしょうか。もしも「スキルなくても全然大丈夫」と言っている職場があるなら、それは「その程度の仕事しかお願いする予定はないし、それでペイする事業を営んでいる」ということで、おそらくあなたが想像するような「自力で問題解決をコードでしているカッコイイプログラマー」では無い筈ですよ。最初から「問題解決をコードでできる」ということを期待されていないということです。

自力で問題解決するにはスキルが必要なんですよ。「スキルなくても大丈夫」なわけがないです。簡単だと思わないでください。

もちろん何にでも例外はありますから、稀有な環境や経営者の下、そういうことができる場合ももちろんあると思います。例えばしっかりとした育成の文化を持っていて、先輩エンジニアが鍛えてくれたりするのであればそういう可能性もあるでしょう。

そんなのは本当にごくごく一部でしかないと思って欲しいです。私の周囲の会社でもゼロレベルから受け入れて伸ばしてくれるような会社なんて殆ど無いです。それができるなら、今プログラミングの学習を補佐する業界自体が成り立たないと思いませんか?(逆に言うとこれも異常ということは後述します)。

割り切り

世の中には様々な環境で仕事している方がいらっしゃると思うので、例えば以下のような考え方であえて「誰でも」となっているところに行く人はいると思います。こういう割り切り判断も時には必要でしょう(むしろそれが救済になっているとも考えます)。ただし、先を考えることは必要だと個人的には思います。

  • 現職の環境があまりにもひどく、退避場所としてでも良いので別の職場を求めている(第一目標が現職からの退避だから)
  • 他業種からIT系の業種への転向を考えているが、例えば年齢などでかなりの不利な環境を持っている為、肩書きだけでも移行し、別途スキルアップして別の職場を目指す為(あくまでステップの一つであり、現場で学ばせてくれないことは前提で考えているから)

おそらく多くの人はこういう事に当てはまらないのではないかと考えます。

どうしてこうなった?という推察

経済などの専門家ではないですが、私や私の周囲・クライアントなどを見ていて思うことを記してみます。

企業側の事情

例えばこういう意見が出ていました。とても真っ当です。私もそう思います。ですがそうやってある程度人を育てていこうという会社に対して現実に多く起こることは

「やっと育ってこれからだと思った頃に社員は別の会社へ出て行く」

なんですね。経営としては最初は完全に赤字だったと思いますし、これからはその人が別の新しい人を育てながら次のステップに入って欲しいと思っていたりするんです。でも、その前に出て行ってしまうことも多いらしい*1です。

個人の行動としては合理的であるし、その結果社会全体では給与が上がる傾向を作れるので良いとも思えます。とは言え最初に雇った会社からすると大問題なわけです。ある程度長い間一緒に歩んでくれるなら良いけれども、これから返していってもらえそうという段階でいなくなってしまうのであれば、経営としてはかなり辛い事になります。投資が回収できないんです。

そうなると会社が「『経験の足らない人を雇って育て上げる』という事に対して臆病になる」と推察できるのでは無いでしょうか。

過去の技術者の怠慢

これは私のようなロートル世代が引きずってきた問題なので、自分自身も当事者であるということも含めた上で記しますが、良くも悪くも「職人文化」「背中で覚えろ」のような考えが横行し続けていて、そもそも人を育てる文化が根付いていないと思います。少なくとも私が過去見てきた会社はそういう場所が大半でした。個人的には抵抗を試みたりしましたが、こういうことができたのはたまたまそれが通用する場所であった為だと思っています。

人を育てない文化は特に今始まったことでもなく、脈々と受け継がれていると言ってもいいような気がします。それではいけないのですけれども。

私の抵抗の話。 ms2sato.circlearound.co.jp

似たような事はこっちに頑張って書いています。

ms2sato.circlearound.co.jp

ブートキャンプやスクールという形式の流行り

というこれまでの流れを考えると、外部でなにか教育するという事が浮かび上がると思います。 海外では全部JavaScriptを用いて3ヶ月でムリクリプログラマーにして現場に送り込む、というようなブートキャンプ形式が一時流行ったのと、日本でそれに乗っかってスタートアップで似たようなことを「スクール」という名目で始めたのが流れでしょうか。

そして、海外でもこういう流れになっていました(2年前の記事)。

jp.techcrunch.com

多くのスクールが、100%近い卒業率と就職率を主張しているが、しかしその主張にはほとんど証拠がなく、スクールの経営実態も多くが開示されていない。

事実開示すべきだという話や、極小のケースを誇張する話が出ています。

スクールの多くが、ある一人の卒業生がY Combinatorに行ったとか、ほんの数名がGoogleに雇用されたとか、そんな一度限りの成果をマーケティングに利用している

今、日本は上記のような海外と同じような流れになっていると思います。おそらく様々なスクールはベンチマークし合った結果、誇大広告と情報商材的な売り方がもっとも売上が上がると考えたのでしょう。

お前のところはどうなんだよ

とりあえず私が誇大広告嫌いなので「xxヶ月で月給xx万円稼げる」とか出したこと無いですね。というか、そういう保証ができないスキルであり、そういう仕事だと私がよく知っているので、保証する事が胡散臭く思えるんです*2。三年半続けていますが、これまで完全初心者よりも少し経験がある人の引き合いの方が当初多かったのもあり、就活系はこれからでしょうか。

困ったのは以前よりもアフィリエイト記事っぽいのがGoogleの検索結果に上がってきて、元々マーケティング下手なうちは前にも増して目立たなくなったことですね。候補に全く挙げてもらえないっぽいです。あはは(笑い事じゃ無い)。

プログラミング トレーニング は流石に強いですが プログラミング 個別指導とかではどこ行った?って感じです。

おしまいに

本当の理想は「会社が組織の中で育てられるから、スキルがなくても問題ない」なんですけど、現実はそうなっていないんですよね。これって私は自分がやっている事業を否定しているわけですが、最終的には弊社がやっているプログラマーのトレーニングの意義が無くなる社会が真っ当だと思っています。

「育て方を、教える」も事業にしたかったりするのですが、それができるのは今の社員メンバーでは無かったりするので、経営としては単純に経営者の現場稼働を増やすだけになってしまう形は作りにくいんですよ。うちがもう少し大きくなって今のメンバーが育ったらできるのかもしれません。

*1:「らしい」と書いているのは、他人の会社の事なので「育ったから出て行く」というシンプルな理由と言い切れないからです。それは副次的な理由で「そもそも長く居続ける理由が無いような会社だった」なのかもしれません。

*2:面接などで聞かれた時に私の返答があまり歯切れが良く無いことを体験している人はいると思います。言い切るの難しいです