島までは遠い 〜サークルアラウンド株式会社代表佐藤のブログ〜

佐藤正志@サークルアラウンド株式会社のことが少しわかる場所。プログラマーを育てるトレーナーとして、現役のソフトウェア技術者として、経営者の端くれとして、想うことをつづる。

「生殺与奪を握られている」という錯覚に気づくこと

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はじめに

年末なので、いつもの友人Sと飲んでいた時の話より。

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前回彼に聞いた「美味いフグを食べながら熱燗飲むとメッチャ美味い」という話を受けて、フグをまともに食べたことない私にその気分を味あわせてくれる為のフグ忘年会を行うことになった。

店に入って席に着くなり「ちょっと報告があって。来年から中国にゆくことになった。」と。

雇われている時に持ってしまう「下手にコトを起こせない」という心理

聞くとどうやら中国で新たに事業立ち上げをするメンバーに選ばれたらしい。3年程、嫁と子供を置いて単身赴任だそうな。

S曰く「転職もしようかとも思ったんだけどね」 前回夏頃に会話した時になんとなく仕事に関して全力投球ではない感を感じていたが、そういう中での話なら転職を選びそうなものではないか。

「なんとなく『ここまでしてダメなら』というところまで付き合ってみようかなと思ってね。今の現場と環境を変えらえるならそれもいいと思ったんだよ。」

そういうものか。自分とは違う判断基準を持っているのだろうなと思うし、ヤツもそう思われていることは気づいているだろう。

色々聞いている中で 「嫁と色々と話してたら『予想通りいかないことがあっても私も働くし、好きに選択したらいいよ』という話があって、なんか吹っ切れた」 という言葉からSはいい人を嫁にしたんだなと感じたし、それは素直に伝えておいた。彼の表現を借りるなら「運命共同体なので、親兄弟よりも信頼が強い」とのことだった。

そんなことがあってから、彼自身も言いたい事を発言するような事を上司なり周囲にできているとも聞いた。なるほど。そういう効果もあるんだな。つまり「別に辞めてもいいや。辞めても最悪の事態にはならない。」という心理になったんだろう。

この感覚は、自分が若い頃に仕事をしながら持っていた感覚に似ている。もともと社員という形で社会に出なかったからか「別にこの場所でうまくいかなかったとしても、元に戻るだけだ。だったら我慢ばかりする必要はない。」という心理。それがある種の思い切りの良さにもなるし、自分の軸を維持して行動できる原動力の一つだったと思う。

それと同じ感覚に、彼は嫁さんの言葉からたどり着いたんだなと、二人で合点した。

Sは「自分は成長が遅かったな」と言っていたが、こういう感覚は大勢と同じ流れに乗っている時には気づきにくいものではなかろうか。単純に気づける経験が目の前にあったかどうかだと思う。それに、彼が手に入れた今の経験値と成長は、今の家庭丸ごとひっくるめて出来上がっているのだから、ただの強がりから始まっている私のそれよりも余程強固に感じられた。

あんまり家庭を羨んだりしないのだが、彼と彼の嫁の関係はちょっと良いなと思ったりしている。

会社の生殺与奪と自立する社員について

会社がその権力を強くする一つの方法は「お前とお前の家族の生活は会社が握っており、そこから離れては生きていけない」と錯覚させることだ。実はそれは錯覚でしかないのだけれど、実際に会社から離れたことのない人には途方もなく大きな後ろ盾を失うような気がしてしまうのではないだろうか。この圧力によって「言いたい事を言えない、言わない」という状態を作ってしまう。実はそれは全体から見るとリスクなのだ。

そうでない形を目指すには「会社に依存するのではなく、自立した社会人として自分は外(別の会社や個人事業でもなんでも)でも仕事ができる」という事を名実ともに実現する事なのだろう。自分は元々会社組織が好きではないので、できればメンバーが個として独立できるレベルの能力を持った上で一緒に働けることを目指していきたい。

昨年、今年と新しいメンバーを迎えたけれど、最初の一年で目指しているのは彼らが「フリーランスしたい」と思った時にできる程度の技術力と人間的能力を身に付ける事だ*1。それは経営としてはリスクになるのだろうけれど、メンバー全員の幸せが大きくなる方へ舵を切るならこの方針で間違っていないはず。

もしも個人で活躍できるようになった途端に出て行ってしまうなら、そういうものだと割り切るしか無いだろう。そういう一時的な拠り所としての価値しか認められていない会社を省みる必要がある。私もまだまだ道半ばだと思わざるを得ない。

おしまいに

学びの多い場だったので、記しておきたいと思ったポイントを置いといた。未来の自分が読み返して思い出せる程度は書けているはず。

とりあえずふぐ刺しの実績解除をできたのだが、熱燗と一緒に食べると確かに美味だった。こうやって経済レベルが下げられなくなりそうな自分が怖い。

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*1:もちろんフリーランスはそれだけあればできるものでは無いが、最低限持つべきものはあると思う